2006年 05月 20日 ( 1 )
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海の意味    谷川俊太郎



海を見ている
どこまでも行きたいと思う
いつまでも行けると思う
それなのにここがどこか
いまがいつか分からなくなる


海を聞いている
この星の大きな心臓が脈打っている
途絶えることのない血がめぐっている
まだ生まれない誰かの声がする
決して立ち去らないものの歌が聞こえる


海に触れている
小さな小さなプランクトンが
巨大なクジラを養っている
深い海溝にひそむ未知のいのちを
海藻の指がためらいがちにまさぐっている


海を思っている
地球を守る大気と同じ色の青い衣
魚たち貝たちと分かち合うヒトのふるさと
嵐と凪の表面の底の変わらぬ静けさ
無限を指し示す水平線


海を愛している
風にあらがいながらも風を孕む帆
日焼けした腕に残る白く乾いた塩の味
海の果実に滴るレモンの香り
古代の伝説そのままと思い出の予感
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by tomokom86 | 2006-05-20 04:28